2015.03.22
Music Rainbow vol.6 ~21 LAT FESTIVAL~
@下北沢GARAGE
Reported by 蜂須賀ちなみ
■℃フーズ
カラッとした明るさを持つ根反慧(Vo)の歌声と前へドライヴするサウンドを軸にしたこのバンドだが、メンバー全員で唄うサビが印象的な「サンデーモーニング」、弾むリズムが印象的なミドルチューン「渋谷D.O.G」、捻った曲展開&コード進行がクセになる「街角フロウ」など様々な面を持っている。叫ぶように唄う根反、笑顔で歌詞を口ずさみながらギリギリまで前へ出ていく小林大志(Gt)、やなし(Ba)。その後ろで井越健人(Dr)は堅実にリズムを刻み続ける。結成当初の鬱屈とした感情を閉じ込めた曲だという「BB」でエッジの効いた演奏を見せたあと、スピード感そのままに突入した「アイアムアルーザー」は、セットリスト前半で見せた様々なエッセンスをいいとこ取りしたようなキラーチューンだった。
1.サンデーモーニング
2.ひとつだけ
3.渋谷D.O.G
4.街角フロウ
5.BB
6.アイアムアルーザー
7.遠くへ
■xenonlight
この日が東京初ライヴだったという名古屋の4ピースバンド・xenonlight。アンサンブルはまだ多少歪なところもあるが、1曲目のバラード曲「宝箱」にしろ、疾走感溢れる2曲目「Placebo」にしろ、どの曲をやっても瑞々しさがあるのが良い。MCでは前日の昼に到着してスカイツリーなどを観光していたと話し、「みなさんスカイツリーって知ってますか?」と冗談めかして笑いを取る場面も。そこをきっかけにリラックスできたのだろうか、機材トラブルに見舞われたこともあって緊張していたように見えた序盤に対し、3曲目「monologue」が始まるころにはメンバーの表情も柔らかくなり、サウンドものびのびしてきた。ラスト、「光の雨」ではまさにザクザクと音の雨を降らせるがごとく、全身全霊の演奏を見せて終了。
1.宝箱
2.Placebo
3.monologue
4.サークルエンド
5.光の雨
■中野誠之(shepherd)
フロア上手側後方に設置されたサブステージでのアコースティックステージ。そのトップバッター・中野誠之(shepherd)は喩えるなら水のような歌声。凛とした透明感があってどこか冷たくて、静かに流れていくようなしなやかさもある。普段のバンド編成とは異なる弾き語りという形だからこそ、彼の声が持つ響きの部分をより堪能することができた。「暦の上では春ですけど1曲だけ冬を思い出して聴いてください」と語っていた「アマレット」や、「本当に大事なことは伝えられないけどそれで終わらせちゃいけないと思って書いた曲」だという「単純な歌でも」など、計5曲を演奏。
1.溜息の向こうで
2.戦場のラストレター
3.アマレット
4.RE:I AM(Aimer カバー)
5.単純な歌でも
■icelandblue
icelandblueは、〈こんなところにいられない〉という最後のフレーズが耳に残る楽曲(タイトル未定)でライヴをスタート。そして3曲目までは間髪入れずに楽曲を連投していく。この日唯一3ピース編成でステージに上がった彼ら。3人というバンドとしての最小編成でガチンコのギターロックをやっているバンドだからこその、メンバーが一斉に掻き鳴らすときのスリル、逆ギレのようなエネルギー、音が波のように押し寄せる感覚。点滅を繰り返す照明も焦燥感を掻き立てる。そんな演奏時と、久下淳史(Vo/Gt)に呉本隆治(Ba)と長南亮(Dr)がツッコミを入れる形で進むラフなMC時とのギャップが激しい。「すごくすごく大事な曲」と語っていたラストチューン「繋いだ今日に」でライヴは終了。バラードだからこそより濃く表れる歪な愛の形がとても人間臭くて良かった。
1.タイトル未定
2.燃えないゴミ
3.透明人間
4.ホームタウン
5.蒼い世界
6.浴槽(仮)
7.繋いだ今日に
■小池龍也(Selfish Jean)
続いてサブステージに登場した小池龍也(Selfish Jean)。様々な編成でライヴに出演している彼だが、この日は弾き語りスタイルでの出演だ。声の震え方から空気の抜き方、AORやファンクの香りを感じさせる曲調まで、とにかく艶っぽい(特に「Heroine」での女性目線の詞は彼の声によく合っていた)。だからといって一切気取っている様子はなく、“Escort”ではオーディエンスにハンドクラップを促しながらバッチリ笑いも取り、気さくなキャラクターもフル活用(笑)。華やかなバンドサウンドを華麗に従えているときとはまた異なる魅力を見せてくれた。
1.夜のまぼろし
2.Escort
3.Heroine
4.触れたくて
■GEMINI
今年一発目のライヴだったらしく、とにかくハイテンションなメンバーの姿が印象的だったGEMINI。國分祐(Vo/Gt)は突然「さくら」(森山直太朗)のフレーズを唄ったり、「Choo Choo TRAIN」のあの振り付けをやり始めたり、完全にフリーダム。大平真五(Gt)、蛇石徹(Ba)、山田琢磨(Dr)の3人が大きく笑う表情もよく目に入り、その「楽しさ」はダイレクトにフロアへ伝播していく。この日演奏された楽曲はアップテンポのダンスナンバーが多かったが、かといって勢いとテンションだけで突っ走るものではなく、凝ったベース&ギターのメロディライン、チラリと覗かせるファンクのテイストなど、ニヤリとさせられる聴きどころも多い。最後までアガりっぱなしだったフロアに投げかけられた「ホント幸せな時間だよね、毎日あったらいいのにね!」という國分の言葉に同感した人もきっと多かったことだろう。
1.アレシボメッセージ
2.セイリオスゲイザー
3.GALAXY GALAXY
4.BOYS “N” GIRLS
5.LIFE STORY
6.ワールドダイバー
■高橋勇成(paionia)
続いて、paioniaのヴォーカリスト・高橋勇成が弾き語りで登場。丸みのある柔らかい声、目一杯張り上げたときの力強い声、ふと呟いたときみたいにか細い声――時間をたっぷりと使いながら様々な声色を行き来する。静まるフロア。息を呑むオーディエンス。その唄い方はまるで自分の胸から綺麗な感情もエグい感情も全部まとめて引っ張り出しているかのようで。「結局、人の感情を根幹から揺さぶることができるのは人の感情なのだ」と、私たちが人の唄う歌に心を震わせる理由を改めて深く刻み付けられたような感覚に陥った。
1.幸吉
2.フォークソング
3.おまえの家(中島みゆき カバー)
4.東京
5.after dance music
■mol-74
この日のラストアクトは『Music Rainbow vol.4』にも出演したmol-74。青い照明が神秘的にステージを彩るなか、1曲目「呼吸」が静かに、静かに奏でられる。武市和希(Vo/Gt/Key)の高音ファルセットを筆頭に、澄み渡ったサウンドが印象的なmol-74。ライヴでの彼らの音には、鳴らされた瞬間に空気が張りつめるような、聴く側にも集中力が必要なほどの潔癖な透明感がある。併せて、「アルカレミア」のジワジワと熱量が広がっていく感じ、「ノーベル」の前へ進む力強さなど、生だからこそより深く感じられるダイナミクスもまた魅力的だ。「ちょうどこの季節にピッタリの曲を」と「アンサーソング」で本編終了。アンコールでは、翌日に誕生日を迎えた本イベント主催者へ花束をプレゼント、という粋なサプライズのあと「赤い頬」を演奏したのだった。
1.呼吸
2.アルカレミア
3.グレイッシュ
4.それから彼女は花のように笑うのだった
5.エイリーについて
6.ノーベル
7.アンサーソング
EN.赤い頬
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