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■あおはるみい

約1年ぶりに帰ってきたMusic Rainbowは、シンガーソングライター・あおはるみいのステ
ージから始まった。ショートボブヘアの彼女はアコースティックギターが大きく見えるほ
ど小柄だが、その出で立ちとは対照的に、歌には一切の甘さがない。幸と不幸は表裏一体
だという現実を真っ向から捉える「裏側」、「自分の鼓動の音ですら鬱陶しく思えること
がある」というMCのあとに披露された「心臓」など、その目線はシビアだ。とはいえ、
演奏は他者を突き放すような冷たいものではなく、「目の前のあなたに歌を届けたい」と
いう彼女の切実な想いが込められている。ステージを見ているうちに何度か彼女と目があ
ったが、その度に強く頷いてくれたのもその証だろう。「私は天邪鬼なところがあるけど
、曲だけは、歌だけは、嘘をついたことがありません」という言葉のあと、ラストを飾っ
たのは「ハローグッバイ」。それは、聴き手との再会を願うまっすぐな歌だった。

1.裏側
2.ハッピーエンドの続き
3.空っぽ
4.心臓
5.ハローグッバイ


 

■シキレコード

続いて登場したのは、シキレコード。シンガーソングライター・石塚翔太によるソロユニ
ットである。1ヶ月ぶりのステージなのだと語っていた彼は、5曲中3曲(「ムードしたい
」「うわのそら」「空気を揺らして」)が新曲という精力的なセットリストでライヴに臨
んだ。アコースティックギターでの弾き語りというシンプルなスタイルながらも、J-POPも
AORもファンクも呑み込んだようなカラフルな楽曲が特徴的。それぞれの楽曲で異なるキ
ャラクターを見せながら会場の空気を揺らしていくが、どこか陰や儚さが潜んでいるよう
な、でも確かにそこに温もりを感じさせるような余韻はどの楽曲にも共通している。その
根底にはMCで本人が話していた「雨が降ったからといって虹が出るとは限らない。そう
いうことを音楽にしています」という意識が深く関わっているのだろう。


1.ムードしたい
2.色ちがいの夢
3.うわのそら
4.空気を揺らして
5.セブンスター


■小島ゆうすけ

3番手は、22歳のシンガーソングライター・小嶋ゆうすけ。ステージ上に登場した小島は
音出し程度にアコギを少し爪弾いてから「インスタント・ラヴ」でライヴをスタート。む
せび泣いているようにも高笑いしているようにも聴こえる絶妙なハイトーン・ヴォイスで

、心のすれ違いをテーマにした楽曲を中心に唄っていく。軽快なリズムを持つ楽曲からス
ローテンポのバラードまで曲調は幅広いが、楽曲ごとに感情の色を使い分けているという
よりかは様々な色が混ざり合ったありのままの状態をそのまま歌に託している印象。「大
好き」も「大嫌い」も同じ意味として響かせるような、無垢な表現力にすっかり心を奪わ
れてしまった。そういえばここまでの3人はすべて弾き語りだが、それにもかかわらず観
ていて全く飽きないのは、それぞれが自らの色を理解し、それをキッチリ示すことができ
ているからに他ならない。


1.インスタント・ラヴ
2.カラマリズム
3.からっぽ
4.空想上のバス
5.ラヴ・コメディ



■Flaria

続いては、この日初のバンドアクト・Flaria。ヴォーカルのKensei Ogataを中心とした5ピ
ースバンドという編成である。1曲目は「Her Twinkle Eyes」。ソロ名義でリリースされた
アルバム『Her Paperback』に収録されている同曲。音源ではシンセサイザーが効いたド
リーミーなアレンジだったが、トリプルギターで演奏されると蒼さや疾走感が前面に出て
くる印象がある。このメンバーでライヴを行うのがこの日が初めてだったということもあ
り、バンドのアンサンブルは少々粗削りだったものの、全体的に、音を合わせる瞬間の純
粋な楽しさや喜びをそのままステージ上に持ってきたかのようなトーン。「今」でしかあ
りえないバンドの温度を切り取りながら、瑞々しいサウンドで会場を満たしていった。


1.Her Twinkle Eyes
2.In Refrain Rain
3.Reach You
4.Paper Moon
5.Someone Will Love You
6.ヴァイオリンケースの夢を見る


 

■k.k.house

5組目に登場したのは、k.k. house。小田渉(Dr)がハイハットを鳴らすなか各楽器が徐々
に音を重ねていく、という1曲目「days」のオープニングから早くも観客の期待感を掻き立
てていく。英詞特有の語感が生み出すリズム、甘みも苦みも兼ね備えた中低音のヴォーカ
ル、空間を縫うようなベースのフレーズ、一筋縄ではいかない旋律&コードでスパイスを
加えるギター――どこを取っても絶妙な温度感のサウンドはポストロック他、ジャズ、ソウ
ルなどが由来だろうか。一音一音を聴くたびに耳が喜んでいるような感覚になるし、そう
して彼らの音楽に自然と身を託したくなってしまう。風を切るような清涼感のある
「Hydrangea」など全5曲を披露。ラストには熱量溢れるアンサンブルを展開し、「オシャ
レ」の一言では片づけられないバンドであることを自ら証明してみせたのだった。


1.days
2.Hydrangea
3.Cinderella
4.preyend a sadgirz

5.after


■山脇鉱資(ハグレヤギ)

続いて登場したのはバンド・ハグレヤギのヴォーカリスト、山脇鉱資。この日はアコース
ティックギター弾き語りでの出演である。まるで演歌や民謡を唄っているかのように独特
な声の震え方をしているのが彼の特徴。心の中のざわめきをそのまま体現するかのように
、その歌声に深く抑揚をつけていく。人間の綺麗な部分の感情と、汚い部分の感情。その
両者に容赦なく焦点を当て、すべてを曝け出していくその歌は、弾き語りというシンプル
なスタイルによってより威力を増している。聴いているうちにこちらの心の内側まで抉ら
れたような、誰にも触れさせなかった部分さえも暴かれてしまったような気分になってき
た。一転、「こころ」はファルセットを多用した柔らかな楽曲。4曲目には新曲も披露した。


1.サーカスが終わる
2.ルル
3.こころ
4.新曲
5.アパート



■ヒトリルーム

vol.7、vol.8以来、「Music Rainbow」には3度目の出演となるヒトリルームは、歌や音楽へ
と向かう自身の想いを描いた「まっすぐ」でスタート。ギター/ベース/ドラム/キーボ
ードという編成のサポートバンドが奏でる優しいサウンドに乗っかるその歌声は、以前よ
りも伸びやかで力強いものになっている。バンドメンバーの紹介も兼ねた各楽器のソロで
魅せた「call me」、ハンドクラップが楽曲を彩った「あとのあとのあと」などで、地に足
のついた多幸感を生み出していく。そしてラストを飾ったのは「タツルミキ」。「(普段
は大阪を中心に活動をしているけど)東京にも素敵な仲間がいて、こんな素敵なイベント
に呼んでもらえてうれしいです」という言葉のあとに届けられたその曲はまっすぐなラブ
ソングだった。


1.まっすぐ
2.call me
3.あとのあとのあと
4.remember
5.タツルミキ


■中野陽介(Emerald)

ここで再び弾き語りアクト。Emeraldのヴォーカリスト・中野陽介の登場だ。長髪に髭を
たくわえた男気溢れる外見から抱く印象とは裏腹に、まるでガラス細工のように繊細で透
明感のある歌声。唄っているときの表情やMCでの語り口などもとても穏やかで、爪弾か
れるアコースティックギターの音色も一際柔らかい。誰かの背中を押すとか、勇気づける
とかそういう趣里の音楽ではないが、ふと立ち止まってしまったときに側に寄り添ってく
れるような、そんな優しさに満ちている。この日はフィッシュマンズのカバー「IN THE
FLIGHT」や、大事な人が亡くなったときに作ったという「おやすみ」などを披露。静か
に空へと溶けていくような彼の歌に観客もじっくりと聴き入った。


1.Summer Youth
2.Nostalgical Parade
3.Pearl
4.IN THE FLIGHT
5.おやすみ
6.月のまばたき



■bolt from the blue

いよいよトリのbolt from the blueが登場。一言挨拶してから「YUGE」でスタートだ。満
面の笑みを浮かべながら心底楽しそうに、遊び心満載の楽曲を陽気なサウンドで奏でる4
人。インストバンドというと小難しいイメージを持っている人もいるかもしれないが、彼
らの音楽はとても親しみやすいもの。フロアではいつの間にかハンドクラップが発生して
いる。「(「Music Rainbow」に)出演するのは100回目なんです!」(※実際は2回目)
と冗談を言うなどMCもハイテンションだが、一転、「frost」では静も動もドラマティッ
クに表現してみせ、これまで演奏された楽曲とは異なる一面を見せてくれた、そして「歌
がなくても盛り上がれる! bolt fom the blueでした、ありがとうございました!」と締め
の挨拶もキマッて「good day!!」で大団円。爽やかな後味を残して「Music Rainbow vol.9
帰ってきたよ、2周年スペシャル!」は幕を閉じたのだった。


1.YUGE
2.your song
3.hoo!!!
4.frost
5.good day!!

2016.02.27

Music Rainbow vol.9
~帰ってきたよ、2周年スペシャル~

@下北沢BASEMENT BAR

Reported by 蜂須賀ちなみ

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